おおともゆう(28歳)。
独特なハスキーボイスと音楽が魅力の、広い世代から人気を集めている若手シンガーソングライターです。
音楽だけでなく小説や詩も書き、日本と同じくらいイギリスやアメリカを愛するおおともさん。彼の象徴はロンドンバスと太宰治。夢は武道館と芥川賞!
いったいどこを目指しているのか?常識にとらわれない彼の半生と哲学を語っていただきました。
おおともゆうと音楽の歴史
ーおおともさんはどんな子どもだったんですか?今みたいに明るい性格でした?
5歳のころに両親が離婚して、東京都江東区で母やおばあちゃん、親戚に囲まれて育ちました。チャキチャキの江戸っ子です。
小学校の授業で「お父さんやお母さんの仕事はなんですか?」って聞かれることがあるじゃないですか。学校の先生もうちの事情わかっていながら「おおともくんのお父さんは何しているの?」って聞いてきたり。それでだいぶ嫌な思いをしましたね。だからかもしれないけど、ちょっと内気な子どもでした。
ー意外ですね。そんな少年が音楽を始めたきっかけはなんですか?
小学生のときに見た映画「スタンド・バイ・ミー」がきっかけですね。50年台のアメリカの田舎を舞台に少年たちが一夜の冒険をする話なんですが、ある種のアメリカンドリームの話であり、少年たちはそれぞれに抱える問題やトラウマを解決していくドラマでもあって、ものすごく影響を受けました。
音楽も衝撃的だったので、映画のサウンドトラックを買って、それでアメリカ音楽に出会ったんですよね。あの映画を見なかったら今の自分はないかもしれない。それくらい影響力が大きかったです。
ーそれで音楽を始めて。独学ですか?
独学ですね。友人の父親からギターを譲ってもらって、ひたすら弾いてました。高校は進学校に入ったんですが、勉強が嫌というより、みんなと同じことをしているのが嫌になってしまって、高校の夏休みにアメリカに短期留学しました。
アメリカは楽しかった!ギターを持って歌っていれば、どこででもヒーローになれたんです。夏休みが終わって日本に帰ってきたら、世界が小さく見えてしまいました。それで担任の先生に「僕は勉強に興味を失ったので、自分の人生を歩み始めます」と言ったら止められて(笑)。遅刻しても何してもいいからとにかく学校に来いと言われて、一応卒業はしました。
大学はアメリカに行ってバンドを組もうとしていたんですが、「日本の大学に入れ」っていろいろな人に言われ続けて、気づいたら日本大学に入学していました。日大の英文学科は女性ばかりの「花のキャンパス」と言われていて、私はキャンパス一かわいい女の子と付き合いましたね(自慢)。
大学では全曲英詞のロックンロールバンドを組んで、プロ目指してやっていたんですが、あえなく解散し、それからはソロで活動しています。
ーおおともさんと言えば名曲「ロンドンバス」。作曲のエピソードを教えてください。
親戚がやっている月島の焼肉屋で、大学卒業から2年くらい店長候補として働いていたんです。8:00から23:00まで働いたので、自分の時間がほとんど取れなくて。感性だけは鈍らせたくないと思って、週に2回は近所のデニーズに行って、寝ずに朝まで本を読んだり詩を書いたりしていました。
ある日、ランチの営業後に焼肉屋の3階で休憩していたんです。せっかく時間あるから、作曲しようと思ってギターを持って。それでギターを弾いていたら、窓から、都営バスが見えたんだよね。今でいう江戸バス。それが店の前を横切ったの。バックは「Always 3丁目の夕日」みたいにキレイな夕焼けで。
そのときに、”Come on now,London Bus.”っていうメロディーと歌詞がふって来たんですよね。今よりももっと低いキーで。「来た!名曲!」と思って、その日のうちに作曲しました。そして、「ロンドンバス」っていうアルバムをすぐに制作しましたね。
ーロンドンバスの正体は江戸バスだったんですね(笑)!
おおともゆうと人生哲学
ー今後の目標やビジョンについて、どう考えているんですか?
今まで何十回と「大友さんのやることにビジョンを感じました、ぜひ会いたいです」と言われて、プロデューサーや事務所の方と会ってきたけれど、俺のビジョンを聞いてどうするんだろうね。ましてや、いつも何時間練習してますか、路上LIVEでどれくらい稼ぎますか、一回の集客はどれくらいですか、っていう質問も。
明日武道館に立つかもしれない人間に、ビジョンなんて聞いたってしょうがない。
ビジョンは幅を狭めるんだよ。
目標を掲げて、目標まででストップしちゃったとして、でも本当は目標よりもさらに行けるはずだったらどうすんの。目標じゃないところに答えがあるかもしれないし。
建設的に考えることは、非建設的なんですよ。
その通り行くかもしれないけど、それ以上に行くかもしれない。もちろん、ギター弾きになりたいのにギター買うな、と言ってるわけじゃないですよ。武道館に立つための「逆算」ってのが馬鹿らしいんですよ。
俺は武道館に立つ。以上。
その間の小さな目標やプロセスに価値は感じないし、ある種の「毒」だと思うんですよね。
ーなるほどですね。目標が必要な人って、目標がないと動かない人かもしれないですね。
ーさらに嫌な質問しますよ。28歳の年齢に焦りますか?
「あなた今28歳ですよね、アーティストとして遅いですよね」カチンと来るね!
ーでもおおともさんのカチンと来る理由は、他の人と違いそう。ぜひ教えてください。
30歳までに期限決めた方がいい、ってよく言いますよね。じゃあ質問です。
あなたのCDを今までに買ってくれたファンはどうするんですか?あなたが30歳になったら。ファンはあなたの未来を買ってるわけですよね。
30歳になってあなたはアーティストを辞められますよ。でもそうしたら、今までのあなたの表現はどうなるんですか?あなたのCDを買って、元気をもらった人の未来はどうなるんですか?
一人でも人の前に立った瞬間に、その人の責任を負ってるんですよ、俺らアーティストは。それに遅いも早いもないんですよ。一生だから。
ーお客様に対して責任感があるんですね。
そうですよ。お客さんの人生かかってますからね。その割にファンは少ないけどね(笑)。
ーおおともさんはいろいろなことに興味があって、好奇心旺盛ですよね。
本当は、自分の音楽性はこれ、って決めた方が売れやすいんですよ。でも俺は、英語もギターも好きだし、太宰治や日本文学も好きだし、(本当に好きなのは酒と女の子なんだけど。笑)自分の今までのさまざまな要素を含めて「おおともゆう」だと思っています。
だから「おおともゆうってジャンルなに?」って言われます。カントリーでもブルースでもロックンロールでもないし、ジャズでも長唄でもないし。ジャンルを特定したくないし、できないですね。だって、いつも違うものに影響受けてるから。
もしかしたら売れないかもしれない、一生。でも、自分に嘘つくとダメなんだよね〜。
ジャンルを特定することは不義理である。と思います。
矛盾することにしか創作意欲がわかないです。
例えば、5年前に書いた曲を今も同じ気持ちで歌えるかというと、歌えないです。じゃあ歌わないかと言われると違います。歌ってそういうもん。落語や武道のようなものではなくて、自分で造ったものだから、どうしても嘘になっちゃうの。だからいつでも矛盾するの。でも歌うんですよ。
ー矛盾を抱えながら歌うって、どうやって気持ちを乗せているんですか?
共感できるポイントで気持ちを入れています。だからおおともゆうの曲は、具体的な地名がないんです。具体的な時代や、時代を象徴するようなワードも入れていません。常に普遍的であるように、すごく意図して作っています。
ーそうなんですね!とても考えて作り込んでいるんですね。
これからのおおともゆうについて
ーとは言っても、そろそろ売れたいですね(笑)。
そうですね。いろんな形で売れたいです。おおともゆう全部で売れたい。オールナイトニッポンのパーソナリティーもやりたいし、落語もやりたいし。小説家、詩人としても売れたいです。30歳になったら小説書いて、芥川賞獲ります。まだ死ねないかもな。太宰治は37歳で死んだけどね。
ーやりたいことが尽きないのはなぜだと思いますか?
言いたいことはひとつなんです。でも興味ある分野は多いから、それぞれの形態で言いたいだけなんですよね。
俺の言いたいことはひとつです。
夢も人生もあなたを裏切ります。
努力もあなたを裏切ります。
当たり前です。そういうものです。期待してはいけません。
だからといって、希望を探すのをやめるんですか?
幸せを追い求めるのをやめるんですか?
誰かに何か言われたからといって、それが全人口ですか?
あなたを好きな人がいるのに、あなたが自分を嫌いになったらどう責任をとるんですか?
人生は負でありマイナスから始まっているけれど、最後はプラスに終われよって思っています。だから、それしか歌ってないし、それしか書いていないです。
ーなぜそのテーマを伝えたいと思うんですか?
むかついてるから、毎日。大人や世間に対して、ものすごいいいかげんだなと思います。
だって小学生のときは「夢は持ちなさい」と言われますよね。でも中学生や高校生になって「宇宙飛行士になりたい」「歌手になりたい」と言うと、ヘッって笑われます。
子どものころには「夢を持ちなさい」、大人になったらその夢を笑われるというのは、完全に日本の病気だと思いますよ。
日本のことは大好きですよ。でも日本にいて「日本大好き」っていうと右翼になってしまう。アメリカやイギリスでは家でも国旗を掲げるのに、日本だと違和感がある。変な国だなと思います。
ーいろいろな分野に興味がある中で、なぜ音楽を自分の中心に選んだんですか?
たぶん、芸術の中で一番優れてるものだと思うからです。
例えば、今あなたの目の前で女子中学生が死のうとしています。
そのときに「俺の小説を読んでくれたまえ、これで君は希望を取り戻す」って小説を渡しても、読むのに時間がかかって、その間に死んじゃいます。
じゃあ「僕の撮った一本の映画を見せよう」と言って映画を見せようとしても、どこか場所を借りなきゃいけない。
でももし、ギターを一本持っていたら?その場で歌えるでしょ。たった3分くらい、長く続かないかもしれないけど、目の前の人を死から救うだけの力を持ってる。それが音楽です。
口で言ったことは忘れられます。でもメロディーがついていたら、ずっとそれをリフレインできます。形がないからこそ、ずっと持っていられて、自分なりのメッセージに変換できて、自分でも歌える。だから、この世の至上の芸術は音楽だと思います。目の前の人をどれだけ救えるかですよね。
ー最後に、これからのおおともさんについて語ってください。
俺はまだまだだけど、音楽に携わらせていただいている、人に聞いていただいているっていう気持ちが最近すごく強くなりました。音楽は、聞いてくれる人ありき。聞いてくれる人がいるから、音楽ができるんですよね。
今までの自分は全部間違ってたと思うんです。もし、過去に戻りたいかと聞かれたら、多くの人がYesと言うでしょ。ここだけは修正したい!というポイントがひとつはあるはず。でもそれは、現在の自分を否定することになりますよね。ということは、未来から見たら、今は絶対間違っているんです。
でも、間違っていても、「楽しい」ってことだけは間違ってないです。40歳に自分に、「今のお前は間違っている」と言われても、「うるさいなおっさん、でも今俺は楽しいぜ!」って言えるかどうかですよ。楽しいってことは未来の自分に負けないんです。
今のベストを尽くそうと10年間思っていたけれど、結局未来から見たら全部間違ってるんだなと思ったら、気が楽になりました。だって、未来の方が成功してるからね。
俺は、夢を否定する大人にはなりたくないです。
愚痴は言うし悪口も叩くし、喧嘩腰だし気も短いけど、夢だけは否定しちゃいけないと思います。
友達の悪口を言うことと夢を否定することは、相手がどんなに馬鹿なやつでも絶対にしません。そんな子どものような大人、「こどな」でいたいです。
ー本日はありがとうございました!
【Information】
Youtube:「Genius Girl」(1stアルバム「Traveling Home」より)
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